ラストレター

2020年01月27日
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おススメの一本
84点

過去と現在が交錯する恋を描いた、岩井俊二監督作品。

ラストレター



高校生の一人娘・鮎美を残して亡くなった姉・未咲。彼女の代わりに、高校の同窓会に出た妹の裕里は、かつて姉に思いを寄せていた小説家の乙坂と再会する。だが、乙坂は彼女を未咲だと勘違いしていた。その後、裕里は未咲の振りを続けながら、乙坂と文通をはじめることに。一方、鮎美を心配して実家に残った裕里の娘、颯香は、実家に届いた乙坂の手紙を見つけ、鮎美と二人で未咲の名前で手紙を送る……。

いつどの時代でも岩井俊二の撮る映画は限りなく瑞々しい。
すれ違う恋や、秘めた恋、一途な愛など、ちょっとでも茶化したり、ひねたり、歪めたりしたら、すぐに陳腐になってしまう恋模様を、岩井俊二は真っすぐにとても真摯に描く。
描かれるのは少年少女の恋ばかりではない。中年になった男女も、老いた男女もこの映画では恋をする。
その姿も岩井俊二は、冷たく突き放すでもなく、かといって熱くなって描くでもなく、静かな目線で描き切る。
これもまたどこまでも真面目だからこそとても美しい。

すべての恋の関係性に、手紙や小説、卒業式の答辞といった言葉が絡まっている構成も上手いと思った。
と同時に、すぐにやり取りのできる現代において、まだ言葉がこんなにも力を持っていることをあらためて思わされた気もした。
手紙が届くのをドキドキしながら待つ登場人物たちの様子は、懐かしく、暖かく、知らず応援したくなるほどに微笑ましい。
それはまさに岩井俊二の描く「恋」そのものなんだと思う。

「スワロウテイル」や「りりィ・シュシュのすべて」など、これまでわりと音楽を軸にしていたのを、あえて言葉にしてみせたところにも、岩井俊二の思いの強さかあるのだろう。
普通の映画なら、状況を説明したり、思いを吐き出すシーンでは言葉が嘘っぽく見えてしまいがちだ。
それがこの映画ではとても自然に見える。それも言葉の力を大切にした描き方をしているからだと思う。

映画には汚い大人も小ズルい大人も出てくる。すべてがすべて美しいわけでもない。
「お前はなぁ、あいつの人生になんら影響を与えてねえんだよ」
そんな傷をえぐられるような台詞も出てくる。
それでも岩井俊二は言葉を信じている。言葉を信じようとしている。だから描かれる映画はやっぱり瑞々しい。

どこをとっても素晴らしい。けど、一番瑞々しいのはやはり過去の高校生時代だろう。
広瀬すずが上手いのはわかってはいたけど、森七菜も負けないくらい素晴らしかった。
最後のあんまり上手くない歌も含めて、最高という言葉じゃ足りないくらい最高。
少女を魅力的に描かせたら、岩井俊二に敵う人はいないんじゃないだろうか。

全体的に岩井俊二作品の総まとめのようになっているのも面白かった。
中山美穂も豊川悦司も、松たか子もみんなきっちり心に何かを残してくれる。
傑作だと思います。

※ほか、ちょっと。
・庵野秀明の出演は「式日」のお返しなんだろうなぁ。ヤキモチ焼きの庵野にはちょっと笑った。
・そこはかとなく流れているユーモアもまた美しい。
・森七菜が成長して松たか子になると思うと、松たか子のシーンもかなりグッとくる。
・台詞だけ取ったら結構臭いんだけど、それがまたいいんだよなぁ。
・映画館の暗闇にまぎれてかなり泣きました。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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