リチャード・ジュエル

2020年02月04日
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観ておきたい一作
77点

クリント・イーストウッドが実話を基に描いた社会派ドラマ。

リチャード・ジュエル



正義感が強く融通の効かないリチャード・ジュエルは、警察や警備員を首になり続け、いまはオリンピックの警備として働いていた。そんなある日、彼はイベントの行われていた公園で爆弾を見つけてしまう。すぐに対処して被害を最小限に抑えた彼を称賛する世間とメディア。だが、数日後、FBIが彼を容疑者として挙げ、それがマスコミに漏れたことから、彼は窮地に陥り……。

クリント・イーストウッドは実話を題材にしてフィクションとしてまとめ上げるのが本当に上手い。
たまに実話にこだわりすぎてしまう作品もあるけれど、これは全然そんなこともなく、バランスが良く、素晴らしい出来だった。

冒頭から描かれる爆弾テロの圧倒的な恐怖。
そこから続いていく国家とメディアによるリンチのような恐怖。
まるで対照的な二つの恐怖が、同等に描かれているのがまずショッキングだ。

しかも、イーストウッドの批判の目はそこで止まらない。
メディアへの批判は特に痛烈だ。
スクープを取ることだけを考え、「正義を伝えているのだ」という言い訳を盾に、人が犠牲になることも気にしない記者のなんと醜悪なことか。さらにイーストウッドは、その女記者が母親の告白に涙ぐむという描写も入れ込む。
その様子はほとんどサイコパスだ。僕は心の底から気持ち悪いと感じた。

と、現実よりに描くとテーマだけが浮かび上がり、物語に魅力が乏しくなってしまうのだが、その点も彼は抜かりがない。
すべての問題に対して、ジュエルと一緒に立ち上がり、向かい合ってくれるワトソンという人物を用意しているのだ。
ワトソンは真っすぐで、でも大人で、どうすれば問題が解決するかを現実的に考える。
ジュエルが犯人ではないかという疑いも自分の中で否定しない。
ちゃんとすべてを受け止めて対処しようとする姿は、とてつもなく格好がいい。こういう素敵な大人を描いてみせるのも、イーストウッドの得意技と言っていいだろう。

ワトソンに対して、ジュエルはひどく子供だ。
「自分は正義を貫いている」という一点にこだわり、なかなか現実に向き合おうとしない。
その結果、ワトソンと対立してしまうばかりか、母親をも苦しめてしまう。
もちろん彼に非はない。それでも観ていて応援したい気持ちになれないのは、どこかわがままを感じるからだろう。
そういう人物造詣も、被害者を単なる被害者にしていなくて、やっぱり上手いなぁと思う。

テロへの抗議であり、国やメディアに対する皮肉であり、社会に対する批判でもある。
一方で、悲劇から抜け出すためのバディ物であり、戦略合戦であり、成長物語でもある。
素晴らしい一本だと思う。

※ほか、ちょっと。
・繰り返しになるが、サム・ロックウェル演じるワトソンが最高に格好いい。何から何まで格好いい。大人として格好いい。
・個人的にはラストシーンもかなり皮肉だよなぁと思った。
・メディアに携わっている人は観ないとダメですよ。
・老いてもこんなチャレンジングな映画を撮るクリント・イーストウッドには尊敬しかないです。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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