さよならの朝に約束の花をかざろう

2020年05月16日
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傑作と言っていいと思う
82点

脚本家の岡田麿里が初監督したオリジナルアニメーション映画。

さよならの朝に約束の花をかざろう



長い寿命を持ち人里離れた地でヒビオルという布を織り続けるイオルフの民。しかし、ある日、村は襲われ、みなバラバラになってしまう。一人になったマキアは、旅の途中で赤ん坊のエリアルを見つけ、育てていくことを決意する。まるでままごとのような生活の中で、しっかりと成長していくエリアル。だが、大人になっていくエリアルと変わらないマキアは、だんだんと以前のような関係でいられなくなっていき、ついにエリアルはマキアの元を離れていくのだった……。

王道のファンタジー大河ドラマだと感じました。
宮崎駿以来、ここまでファンタジーの世界を魅力的に作り上げた人はいないんじゃないでしょうか。
それぐらい、細かいところまでしっかりと作り上げられた世界観は、それだけでも人の心を惹きつけます。

権力のために利用されれるイオルフの民。
徐々に死に絶えていくドラゴンの一族。
戦争に明け暮れる王族たち。
必死に毎日を生きる市井の人々。
と、いろいろな世界の情景が描かれ、それらが絡み合って、物語となっていく様子が素晴らしい。

しかも、この映画では一人の人生の一生分の時間が流れます。
赤ちゃんを連れたマキアを受け入れ、子育てを教えてくれる姉さん肌のミド。
彼女の息子の一人、ラングは成長して、軍隊に入り、マキアにプロポーズをするようになります。
幼い頃にエリアルと遊んでいた少女のディタは、成長してエリアルと結婚し、子供を産みます。

それぞれの人たちが子供から大人へと変わっていくなか、イオルフの人たちだけが何も変わりません。
そこに彼らが「別れの一族」と呼ばれる所以があり、泣けてしまうポイントのすべてがあります。
ずっといつまでも姿が変わらないということは、彼らと一緒に時間を過ごすことができないということだからです。

そして、そのことに一番苦しみ、悩み、そして向き合っていくのがエリアルなのです。
マキアは彼にとって、最初は母親でした。
でも、彼が成長していくことによって、それは友だちへ変わり、ついには恋愛対象へと変わってしまいます。
彼はマキアを「母親」として見ようと必死に努力します。
でも、無理なのです。だって、マキアはいつまで経っても少女のままなのです。

苦しみぬいたエリアルは、マキアの元を離れることを決意します。
それで問題が解決しないことはわかりつつも、そうとしかできないからです。
彼のこの選択がたまらなくせつない。それを静かに受け入れるマキアの姿がたまらなく悲しい。

そして、ラストもやはり同じこの悲しさとせつなさに満ち満ちています。
それでも最後に「これでよかったんだよね」と思えるのは、マキアとエリアルが、親子の愛も、人間愛も、恋愛も越えて、それでも「あなたを愛しています」とお互いに認め合えるところまでたどり着けたからです。
「あなたがいてくれてよかった」と心の底から、お互いに思えたからです。

でもね、これを泣くなってのは無理ですよ。
岡田麿里は絶対に泣かせにくるだろうから、絶対に泣いてなんかやるもんか。
そう固く思ってたのに、気づいたら号泣していましたよ、僕は。

これは、掛け値なしで絶賛したい「泣ける」映画です。

※ほか、ちょっと。
・マキアの友だちのレイリアの物語も同時進行で描かれるのですが、こっちもつらい。別の意味で悲しいです。
・誰が何のためのに戦っているのか摑めない戦争の描き方も上手いと思いました。
・マキアの声の石見舞菜香さんは、この映画が声優として初主演だったそうです。見事でした。
・少し離れた場所から傍観しているバロウって存在を描いたのもよかった。
・どこの局でもいいから、早いとこ、地上波で放送したほうがいいですよ(NHKに頑張ってほしい)。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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