この世界の片隅に

2020年06月02日
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傑作と言っていいと思う
87点

こうの史代の原作漫画を片淵須直がアニメ映画化。

この世界の片隅に



18歳で広島から呉へと嫁いできたすずさんは、慣れない環境に戸惑ってた。時代は、戦争のさなか、日々の様子も徐々に変わっていく。そんななか、夫・周作の姉、径子が娘の晴美を連れて、実家に戻ってきて……。

戦時中にも普通の人々の普通の暮らしは当たり前のようにあった。
そんなことをあらためて感じさせてくれるような傑作だと思う。

すずさんをはじめ、出てくる人たちは、軍人を除けば、みんなどこかおっとりとしている。
食べる物が少なくなっても、空襲警報に追いやられても、彼らはみんな地に足のついた生活をしているのだ。
どんなに形が変わろうと、彼らの生き方は変わらない。そこにはごく普通の生活がある。

当たり前のようにある「普通」が次々と奪われていっても、普通の人たちは強い。
いろいろと工夫をしながら、毎日をちゃんと生きている。
そんな姿に微笑ましくなり、大切にしたいと思う気持ちが生まれてくる。
それだけに、余計に、戦争の恐ろしさがはっきりと見えてくる。

戦争は、普通の人たちから普通の生活を奪い去る。
すべてを根こそぎ奪い去って、そして何も残さない。
普通の人たちはただ歯を食いしばって、それに耐えることしかできない。
それが、たまらなく怖のだい。

戦場で起こった悲劇もあるだろう。
上層部のなかでの軋轢や対立なんかもあるかもしれない。
原爆の被害者たちの体験は、地獄そのものだ。
それらは全部、戦争の傷跡で、残していかなかければならないものだと思う。

でも、そういった目立つものに隠れてしまいがちだが、ごく普通の人たちも同じように戦争被害者なのだ。
戦争がいかにして、日々の生活に入り込み、壊していくのか。その事実は忘れてはならない。
と同時に、たとえ戦争があったとしても、多くの人たちはちゃんと生きていた、という事実に心打たれる。
人間は強い。抱えきれないほどの悲しさやつらさを前にしても、それでも生きていく。
そして、そうやってでも生きていこうといく人は美しい。

ずっとずっと、流し続けてほしい映画だと思う。

※ほか、ちょっと。
・この映画に関する批評とかで「クラウドファンディングで製作された」というのをよく見かけますが、あれは間違いです。映画のパイロット版を作るためにクラウドファンディングで資金を集めたのです。そのパイロット版により、企画が通り、映画の製作につながります。なので、製作委員会もちゃんと存在しています。現状のクラウドファンディングでは、映画一本をつくるほどのお金は集められません。そこら辺は誤解がないようにしたほうがいいと思います。
・NHKがテレビでの放送を行ったのは、誉めてあげたい。また、二度目も放送したのもほめたい。これからは定期的に、毎年一回でもいいから放送してほしい。
・能年玲奈さんが「のん」の名前で、すずさんを演じています。のんびりして、ちょっと抜けていて、でも芯のある、いい演技だと思いました。
・花街のエピソードをたっぷり加えたバージョンの「この世界の(さらにいくつもの)片隅で」もいい映画でした。まるで違う作品のように味わえますので、気になった方はぜひ。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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