ゴンドラ

2020年06月04日
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おススメの一本
71点

AV監督のTOHJIROがAVデビュー前に伊藤智生名義で撮った自主製作映画。

ゴンドラ



マンションで母親と二人暮らしをしている小学五年生のかがりは、家にも学校にも居場所を見つけられないでいた。そんなある日、飼っていた文鳥が死にかけているのを見つけた彼女は、たまたま家の窓ふきの仕事をしていた青年、良に頼み、動物病院へ連れて行ってもらう。しかし翌日、文鳥は死んでしまった。それでも、かがりは良と話をするうちに、次第に彼に打ち解けていく。そして、家出をして良の元へとやってきたかがりを、良は実家の青森に連れていくことにして……。

懐かしいような、振り返って覗き見てはいけないような、そんな不思議な感じに満ちている。
この感覚は、たぶん、誰もが昔に感じていただろう「子供の視線」なんだと思う。
どこかいびつに歪んで見える世界。よくわからない大人たち。死への憧憬。自分だけの秘密基地。世界に対する説明できない居心地の悪さ。知らない土地への郷愁。

どれもがかつて見た記憶のある風景で、それでいて現在の自分が持っていない視線だと気づかされる。
この視線をここまで純粋にストレートに、見事に描き切った感性に恐れ入る。

映画は終始、息詰まるような不穏な気配に包まれている。
それもまた、この映画が「子供の世界」そのものであることを証明している。
子供には振り返る過去がほとんどない。そして、見える未来は決して明るいものとは限らない。

元気で生き生きとしていて素直で純粋。
という大人が勝手に抱く子供の理想像をこれでもか、とぶち壊してくる上村佳子が素晴らしい。
すべてに絶望しきっているような彼女の姿は、逆に子供の姿としてとてもリアルだ。

基本的には孤独を抱えた少女と青年のハートフルな物語なのに、冷静に見ると青年はロリコンにしか見えない。
物語はそんな風には進まないし、描きたいものも違うとはわかりつつ、そこはかとなく漂ってくる気持ち悪さは面白いと思った。

自主製作でここまでの作品ができるんだ。
ちょっと感動した。

※ほか、ちょっと。
・その後、上村佳子さんは女優にはならなかったっぽい。すごいいいのになぁ。
・小学生の女の子を連れて電車で新宿から青森へ向かうってのは無理があるんじゃないだろうか。房総半島とかにしとけばよかったのに、とも思った。
・助監督に飯田譲治の名前を見つけてびっくりした。
・伊藤智生名義で二作目を作る計画があるらしい。クラウドファンディングでもなんでもして、ぜひ実現してもらいたい。
・特撮とかまったく使っていないだけに、冒頭のシーンはめっちゃ怖いです。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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