CURED キュアード

2020年06月09日
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観ておきたい一作
76点

ゾンビのその後を描いたデヴィッド・フレインのデビュー作。

キュアード



メイズウィルスに罹りゾンビ化してしまったセナンは、治療を受けて回復者として社会に復帰した。しかし、世間の目は厳しく、風当たりも強い。そんななか、引き取ってくれた義姉のアビーだけは、そのままのセナンを受け入れてくれていた。一方、迫害を受け続ける回復者たちは、感染者を解放することを目論み、セナンにも協力を求めるのだが……。

ゾンビ映画のスタイルを借りたすさまじい差別の映画だと思った。
かつてゾンビだった人間たちは、自らの行いを悔い、苦しみ、苦悩する。
世間は表向きは「病気だったんからしょうがない」と同情を装うものの、その実は回復者や、まだ回復に至らない感染者たちを「隔離しろ」「殺せ」と声高に叫ぶ。

この映画の恐ろしさは、その差別を簡単に「いけないこと」だと言えないところにある。
例えば、自分の大切な人を殺した人間が目の前に現れて「あの時は病気でやってしまった」と言っても、たぶん僕はその人を許せないだろう。その人がどんなに悔やんでいても、その気持ちに変わりはないだろう。
そこにある憎しみや敵意は「差別するのをやめよう」などと簡単には言えない思いなのだ。

一方で、回復者たちの苦悩も痛いほど伝わってくる。彼らは、殺したくて殺したわけじゃない。もっと言えば自由意志で殺したわけでもない。そして、彼らはそのことにいまも苦しみ続けている。

一番人間らしい気持ちは、同情したくてもできないというものだ。
そのことを体現している義姉のアビーの気持ちこそ、観客にもっとも近いのだと思う。

ちょっと引いて考えてみると、この映画は断絶の映画でもある。
人間とゾンビ。その断絶をつなぐための要素として回復者がいる。
でも、人間は回復者を受け入れようとはしない。断絶は決して埋まらない。
ここら辺も、とても現代的で、いろいろと考えさせられた。

ゾンビ映画にこれまでにはない一石を投じた傑作だと思う。

※ほか、ちょっと。
・走るゾンビはやっぱり怖いです。
・ウィズコロナなどという言葉が飛び交う現代に、こういう映画が生まれたことも怖い。
・何度か入ってくる驚かす系の演出だけはやめてほしかった。
・回復者の苦悩だけでも映画にできたと思うのに、そうしなかったところはすごい。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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