グラウンド・デス

2020年07月26日
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観ておきたい一作
75点

さまざまな映画祭で話題になったらしいデンマーク製のサスペンススリラー。

グラウンド・デス



ジャーナリストのリーは、取材で訪れた地下鉄トンネル工事の現場で火災に巻き込まれ、医務室に閉じ込められてしまう。やっとのことで、隣りの部屋にいた作業員のイーヴォとバランと合流した彼女だったが、二人もまた成す術がなく戸惑っていた。助けを待つのか、自ら逃げだすのか、三人は悩む。そうしているうちにも酸素は徐々に減っていき……。

よくあるタイプの密室スリラーものか、と思っていたら、完全に裏切られた。
状況としては間違いなく密室スリラーなんだけど、その臨場感が半端ではない。

工事現場の風景はとことんまでリアルに描かれていて、かつ予定調和なことが何も起こらない。
部屋が狭いのも、ドアが開かないのも、窓が小さいのも、演出のためではなく、あくまでもリアルな光景なのだ。
加えて、恐怖をあおるものが、気圧、温度、酸素とどれも目に見えない。
だからこそ、余計に恐怖感と絶望感が滲み出てくる。

時が経つにつれて三人の中のエゴや弱さは大きくなっていく。
次第に三人ともに「自分だけが生き残る」ことを考え、行動しはじめる。
それでも、現実がそうであるように、この映画ではその行動が何も生まない。
アイデアを思いついても、実行することができない。
実行しても、結果として生き残る道につながらない。
これもまた、とんでもなくリアルだ。
そして、彼らは行動とは何の関係もなく、さらに厳しい状況へと追い込まれていく。

途中で一か所だけ、彼らが救いらしきものを見つけられるシーンがある。
これも、彼らが動いたから、とか逃げ出す道を見つけた、とかではない。
ただ、たまたま救いが現れたというだけなのだ。
しかし、救いは目の前で簡単に消え失せてしまう。

死にたくないけど、何もできないという状況がとんでもなく恐ろしい。
特にラスト近くの呼吸器を奪い合うシーンは、命がかかっているだけに、凄惨で残酷だ。
それを手にしたところで助かるわけではない。でも、手にしなければ確実に死ぬ。
現実問題としてこんな場面で、やさしさとか尊厳とかを保っていられる人はいないだろう。
だから彼らは醜くも奪い合い、生き残ろうともがく。

観ているだけで息が苦しくなってくるような、すごい映画だった。

※ほか、ちょっと。
・原題は「カッターヘッド」。なんで英語の邦題を付けたのか、理解に苦しむ。
・リーがいい感じに嫌な女なのもよかった。
・ラストを迎えたあの二人が、その後、どんな言葉を交わすのか。考えただけでも恐ろしい。
・呼吸器のシーンは本当、名シーンです。金をちらつかせ、しまいには家族を持ち出すあたりのゲスさがリアルであり、残酷だと感じました。
・電気が消えたら画面が真っ暗になる、とか、変な感じでカメラが揺れる、とか、そこら辺もお気に入り。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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