実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

2014年08月13日
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おススメの一本
90点

奇才・若松孝二が低予算で撮り上げた連合赤軍の実録ドラマ。

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学生運動がやや下火になってきていた1971年、資金を持つ赤軍派と銃などを所持していた革命左派のそれぞれの軍事組織が共同して「赤軍」を立ち上げる。後に「連合赤軍」と名前を変えたこの組織を率いていたのは、元赤軍派の森恒夫と元革命左派の永田洋子の二人。彼らは同志らとともに、銃を手にした武装蜂起を目指し、山岳に秘密基地を作るとそこに籠り始めた。だが、閉ざされた空間の中で彼らの心は徐々に追い詰められていき、やがて「総括」と称したリンチが始まる。「総括」により次第に殺されていく同志たち、そして偵察のために山を下りた森と永田の逮捕。残された坂口ら5人は、警察の手から逃げつつ、たどり着いたあさま山荘に立て籠もることを決める……。

連合赤軍とかあさま山荘事件とか、言葉は知っていましたが、その内情はほとんど知らなかったので、この映画にはものすごいショックを受けました。

ここで描かれているのは極限状態における人間の狂気です。
そして何より恐ろしいのは、これが実際にあった事件だということです。

「共産主義のためには個を捨てろ!」と怒鳴り「総括」を繰り返す森の姿は、言葉とは裏腹に権力志向に満ち満ちています。
同様に、女性の同志たちを次々と「総括」していく永田の姿は「嫉妬心」の塊でしかありません。
しかし、その二人に怯えることはあっても、異を唱える人間は誰もいません。「我々は~」と語り、自分を個人として認識することを放棄しているからです。

ただ、「総括」のターゲットにされた人間たちだけが、個人としての苦しみを背負わされます。「私は死にたくない」「お前自身が総括しろ!」と彼らは最後に「個」としての叫びを残して死んでいきます。
残った人間はただそれを見ているだけ。

地獄というものがこの世に存在するなら、きっとこんな世界だろうと思わされます。それぐらい恐ろしい狂気がここにはあります。

ただ、この映画には救いもあります。
皮肉にも「あさま山荘事件」がそうなのです。

森と永田というリーダーを失った彼らは、あさま山荘で自らに目覚めていきます。もう戻ることはできないとわかりつつも、人間性を取り戻していきます。

仲間に銃を向けた同志に対して「銃(暴力)は権力者に向けろ!」と怒鳴る坂口の姿。
「勇気がなかったんだよ」と泣きながら叫ぶ、兄を「総括」で亡くした弟の姿。
それらは、人間性の復権に他なりません。
どうしても譲れない思想を手放せないまま、それでも彼らは最後は一人の人間になれたんだと思います。

また、時代の持つ力ということも改めて思い知らされました。
どの時代であれ「いま何が正しいのか」を判断することは人にはできません。結局のところ、正しいか正しくないかは後の時代の判断に過ぎないからです。
人はその時に「正しい」と思うことに従うことしかできません。
その意味で、連合赤軍は「新撰組」や「白虎隊」、「ナチス」や「オウム真理教」とも相通ずるものがあるのだと感じました。(ただし、オウムに関してはちょっと違う部分もあります。が、それは長くなるので省きます)

時代に翻弄されつつも、時代を生きた人の物語。
監督が意識したかどうかは別として、この映画にはそんな側面もはっきりと描かれていました。

※ほか、いろいろ。
・じつは若松孝二さんの作品を観るのは初めてでした。他の作品も観てみたいと思います。
・3時間以上ある長い映画ですが、それを感じさせない力がこの映画にはあります。
・最初に「連合赤軍」が生まれるまでを昔の映像とナレーションで描いているのですが、これはいらないかなぁとも思いました。原田芳雄の声でなんとかなってるものの、やっぱりちょっと説明的にすぎます。
・おそらくここは創作の部分だと思うのですが、坂井真紀さん演じる遠山美枝子の「総括」のシーンは衝撃的でした。本気で震えるほどの精神的な恐怖があります。
・並木愛枝さんが演じる永田洋子の恐ろしさも印象的でした。
・坂口弘役をARATAが演じているのですが、これがいい。顔の見えない人物が、最後には「ひとりの人間」になる様子を、彼が見事に演じきっています。
・役者さんはどの人も上手でした。
・全員が実名というのもすごいことだと思います。
・教科書なんかでは学べない歴史がここには確実にあります。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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