月とチェリー

2014年08月25日
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おススメの一本
75点

ぴあフィルムフェスティバルグランプリ受賞者のタナダユキが、エロスをテーマにした映画イベント「ラブ・コレクション」に参加した作品。R15指定。

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二浪して大学に入った田所は誘われるがままに官能小説を書くサークルに入部する。が、その歓迎会の場で唯一の女性部員である真山に、いきなり童貞であることを指摘され、しかも、その翌日には彼女に童貞を奪われてしまう。だが、彼女の目的はあくまでも小説を書くための取材。田所は毎週のように彼女とセックスを繰り返しながらも、複雑な気持ちを抱えていた。そんなある日、バイト先の女の子から告白を受け、田所は彼女と付き合うようになり……。

タナダユキのセンスの良さは抜群だ。
テンポ、物語、台詞、映像、編集、とどれもが上手い。それもただ上手いだけではない。
ちょっとでも失敗したら台無しになってしまうようなギリギリの部分を彼女は飄々と上手くやってのける。

「ピーマンがお前を許さねぇんだよ!!」

こんな台詞を書ける人はそうそういるもんじゃない。
(それを自然体なぶっきらぼう振りで言ってのける江口のりこもすごい)

また、コミカルである一方で、きっちり深刻な部分も軽く描いているのはこの人ならではだ。中でも好きな人の目の前で他の女とセックスしながら、泣きつつ愛の告白をするシーンは秀逸。これも簡単に描けるシーンではない。

彼女の発想はぶっ飛んでいる。でも、そのぶっ飛んだ部分をまとめあげてしまう力が彼女にはある。

ただ、ひとつだけ難を言う。
作り手が作り手を主人公とするのはどうしても無理があった。そこには嫌でも自己批判やメッセージが出てきてしまうからだ。
「テクニックだけなんだよ」とか「人の本当の気持ちがわからない人間にいい小説なんか書けっこないよ」とかいう台詞は、まるでタナダユキが自分自身に向けて言っているようで痛々しかった。

それでも、この映画が素敵なのは、きっちりと青春映画になっているからだろう。「たかがセックスじゃん」という部分と「でも、セックスなんだよ」という部分が、本当に絶妙な感じで描かれていて、観ていてすごく心地がいいのだ。

セックスと恋と愛を描いているのに、全然やらしくならないのもよかった。エロというよりは青春映画として良作だと思う。

※ほか、いろいろ。
・唐突でぶっきらぼうで無鉄砲でわがまま。そんな真山役を江口のりこが好演している。見事としか言いようがない。
・主人公のダメっぷりを全面に押し出した永岡佑の演技もいい。
・柄本明、蛭子能収、内田春菊といった癖のある俳優さんをここまで自然に見せたのも上手いと思う。
・「小説が書きあがったら彼女は二度とそいつとはセックスしないんだよ」という伏線がたまらなくよかった。
・「おいおい、それでいいのか」と言いたくなるラストもそれはそれでありだと思う。
・時々入る青空のシーンもよかった。
・ラスト前に見せる江口のりこの笑顔が本当にキュート。たまらなく可愛く見える。ここも上手い。
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ひこくろ
Posted by ひこくろ
フリーでライターをしています。
有名人に会えるとワクワクしてしまうミーハーです。
1000本分の映画をぶった斬ってしまったので、これからはおススメの映画が1000本分溜まるまでやろうと思っています。

※おススメな映画があったらお気軽に教えてください。

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